久々に真面目な社会人してきましたよ| ´ω`|ノ

いやあまさかかつての再出発の始まりの地に再び戻ってくることになるとは・・・。
今日からの職場が昔の職場の隣なんですよね(笑)
懐かしすぎて会社出た後周辺を一周してかつての職場と最寄り駅の写真を撮ってしまいましたw
帰りに会社を出た時には雨が降っていて、
微妙に天気雨に新しい門出を祝福してもらった感じでした(*´∀`)

取り敢えず、今日明日は真面目な社会人モードで早く寝ようと思います。
ゆっくりでいいさモード完全解除です( ・∀・)
今週は平日に動けない分土日に色々やりますぞ!ヽ( ゚∀゚)ノ
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百合話つくったりミクさんと音楽つくったり歌ったり

相変わらずのんびりと先週を過ごし、
土日が忙しかったのを通り越して、
明日から朝から夜までのお仕事に戻ることになりそうです。

ホワイトデーのあと、17日土曜日に鶴見線の旅、18日日曜日に八十八箇所めぐり、19日月曜日はカラオケ行ってました。
19日のカラオケは全てボカロ。
ハロープラネットから始まって、ワンダーラスト、ダブルラリアット、ぽっぴっぽー、ローリンガール、トゥインクル、ハッピーシンセサイザ、初音ミクの消失を歌って参りました。

消失は何とか歌詞を全部追えるようになったカラオケでは毎回歌いたいところ。
メルトも歌ったけどメルトも歌うの結構大変ですよね。
たまに息が続かない、消失ももちろんたまに息切れしますw
後は歌いやすさとしてはやはりリンとレンが歌いにくい。
自分としてはルカ姉が一番歌いやすくて次がミクさんかなと。
もちろん性別的にカイトやガックンが一番歌いやすのですが今回は久々だったのでささくれさん中心にミクさんとルカ姉メインで。
ガックンだとダンシング☆サムライと武思道歌ってみたい。
でもガックンの場合通常のガックンの歌とMALICE三昧になってしまう(笑)

いやあ、しかし改めて歌詞を眼で追うとささくれさんのセンスに脱帽です。
ささくれさんて曲も動画もセンスあるけど実はさり気なく一番すごいのは歌詞だと思います。
ハロープラネットもそうだけどワンダーラストとかフレーズが凄い少ないのに心に届く。
文章書く人間は上手い歌詞を書く作詞家の方も手本にするべきだと思う。
hydeさんとかMALICEやZABADAKとかの歌詞とかも勉強になりますよ本当に、比喩に比喩を重ねた上で伝えたい事を伝えるって良いなあと思います。
文字数を大量にかければ伝えたい事をどうにか伝えることは出来ても文字数が少ない時にそれをどう同じように伝えるかは物書きは勉強しないといけないと思うのです。
日本は特に俳句とか短歌の文化があったり、賢治先生とかみたいに僅かな文字数でとてつもない詩や表現をつくりだす人がいたりして、多くの人が少ない文字数での表現を昔から追求していますから自分も日々精進です。

という訳で、百合話つくったりミクさんと音楽つくったり時には歌ったり(こえ部や歌ってみたも興味はありますw)しながら、
明日からは普通の仕事もこなしつつやっていこうと思うのです。
あとゲーム的にはポケモン待ちかなw

あ、書いている内に日付変わってしまった(笑)

冬休みと春休みがくっついたような長い休み(休んでいただけではないけどw)はこれにて終了という、区切りの日記でございました| ´ω`|ノ

百合団地シリーズ(仮) Vol.04 桃色少女

ホワイトデーということで。
久々に百合団地1本書いてみました。
ちょっと久しぶりに難産だったので短めです。
今回は1ヶ月ぶりにVol.00,01の二人の話の続きです。
読んで頂けたら幸いです| ´ω`|

↓ココから百合話

桃色少女
             
雨泉 洋悠

 花月、草木いよいよ生い茂るはずの月。一日毎に、温度は僅かながら上がっていき、道端の草木も少しずつ鮮やかさを取り戻す。
とは言え、まだこの時期特有の、時々暖かい陽と大多数の程々に寒い日の、気まぐれを繰り返し、空気は草木のお色直しを待つ私達を、焦れさせる。
 春は、まだまだ遠いかな?

十字型の夕陽に照らされた、月乃さんとその最愛の友。
 いつもの場所で、いつもの待ち合わせ。いつものように、月乃さんの演奏を聴きながら、最近のお気に入りに視線を落とす。
完全なる証明。それは、如何様にしてなされたのか、興味は尽きず、進むその足は止まらない。
既に人影はなく、この場で月乃さんの産み出す旋律に、耳を傾ける者は私一人。
私の集中を邪魔することのない、その音階は私をより深い真理の世界に誘う。
何故彼の人は、真理に辿り着きながら、それによって自らに与えられた栄光、その全てを置き捨てたのか。
未だ真理の探求の為の手段を学んでいる途中である私には、到底未だ知る由もない。
私の手の中にあるこの本が、私の学びの一助になることを願いながら、彼の人の背中を、月乃さんの音に背中を押されながら、心の内で無心に追い続けた。
一つの区切りの章を読み終えた時、丁度良く月乃さんが演奏を終えて、私に話しかけてきた。
「明後日、陽子の家に行っても良い?」
 月乃さんの言葉は、正直意外な言葉だった。
「明後日ですか?日曜日ですし、別に問題ないですけど…」
 私は言葉にならない疑問符を全身に乗せたまま、本を閉じ月乃さんに向き直った。
月乃さんはお友達のお片づけ中だ。
「ほら、先月に来年一緒にって言ったけど、来週にホワイトデーがあるでしょ?陽子が良ければ、明日二人で一緒にお返しする分を作りたいなーと思って」
 そう言いながら、ピアノにいつものように鍵を掛けた後、私の右隣に座る。
月乃さんの纏う華やかな良い香りと、綺麗な亜麻色の髪が私の鼻と肩を撫でる。
月乃さんは、いつも素敵な香りを纏っている。
そして、いつものように私の髪に触れる。
「今日の初感触」
 月乃さんはそう呟いて、私の髪を、その鍵盤をなぞるのに適したしなやかな両手で、さらさらと弄ぶ。
月乃さんの手の感触が、髪を通して直接伝わってくる。
月乃さんは幸せそうな顔をしている。今日はいつもの櫛は使わないみたいだ。
私も月乃さんの手に直接触れられる方が、心地良い。いつも、大事なものに触れるように、優しく私に触れてくれる月乃さんの手が、私はとても好きだ。
「そういう事ですか、ありがとうございます。何を作るんですか?」
 十字架を通す陽の光が、月乃さんの髪を更に濃い色に染めている。
「う~んとね、ホワイトデーだしクッキーが良いかなあと思ってる~」
 月乃さんは私の髪に視線を落としたまま、そう答える。
「クッキー…難しそうに感じます。私でも大丈夫でしょうか?」
 私はお菓子作りや料理、手先の器用さが必要となりそうなものは、まるで駄目だ。やっぱり正直不安になる。
「大丈夫!私がちゃんと教えるから。陽子は心配しないで~材料とか道具も私が持っていくからあんまり難しく考えずに気楽にね」
 月乃さんは私の髪を束ねたり数えたりしながら、そう答えてくれた。頼もしい。
「ありがとうございます、嬉しいです」
 唇の端が勝手に緩む。月乃さんの言葉は一言一言がとても私の心に響く。
「きっと陽子からもらうみんなも喜ぶよ~お返しは全部私と作るクッキーにしてね」
 その言葉の時だけ、月乃さんは私の方を向いた。少し真剣な表情だ。
「はい、みんな喜ぶと思います」
 私は素直に頷いた。

静かな時間が二人を包む。聞こえる音は月乃さんの手と、私の髪が奏でる音だけ。
いつの間にか、十字の光はその姿を消し、窓の外は紫と藍色の混じり合う、夜の前に僅かばかり見せる表情を浮かべていた。
「月乃さん、そろそろ帰りましょうか?」
 いつもの帰る時間に近づいて、私はそう月乃さんに呟いた。
月乃さんは丁度私の髪の一部をまとめて、蝶を結んだ所だった。今日の羽の色は白だ。
「うん、帰ろう~。今日もこのリボン付けて帰ってね」
 月乃さんは私の髪にとまった蝶から手を放し、立ち上がりつつそう言った。
 そう言えば、月乃さんが我が家に来るのは、今回が初めてだ。

 ピンポーン
 チャイムの音が響く、来たのは恐らく私の待ち人。
本を閉じ、居間の炬燵を出て、玄関に急ぐ。私の奏人である、あの人をお待たせするのは私には許されない。
お気に入りのサンダルをつっかけ、チェーンを外して鍵を開ける。
ドアを開けると、そこには桃色の少女が、緊張した面持ちで経っていた。
ピンクのマフラーに、ピンクの毛糸の帽子、ピンク色で縁が白で彩られたコート。
桃色の上に流れる亜麻色が映える。今日の少女はいつも以上にとても愛らしい。
普段の美しさの中に、可愛さを割増増量した感じだ。手元には、駅前のそこそこ有名な洋菓子店の、手提げ袋を下げている。
「いらっしゃいませ」
 私は満面の笑みで、客人を迎える。しかし、月乃さんに比べて、私の普段着っぷりはどうだろうか。いつもの、水色と白の横縞のセーターに濃い目の紺色のジーパン。
髪もいつもと違って、こないだ月乃さんに貰った白のリボンで後ろで縛って、お馬さんの尻尾だ。
「お、お邪魔します。これお土産です」
 月乃さんが、勢い良く手提げ袋を突き出す。何となく顔が紅く、緊張しているように見える。
「ありがとうございます、月乃さん。取り敢えず上がって下さい」
 そう言って、手提げ袋を受け取る。このお店のお菓子は美味しいので非常に嬉しい。
「はい、お邪魔します」
 月乃さんが靴を脱いで上がってくる。今日は靴も、桃色の可愛いやつだ。月乃さんはまだ緊張しているみたいだ。
「どうぞどうぞ、ひとまず居間の方へ」
 月乃さんを居間に促す。背中にはうさぎ耳の付いた、うさぎの顔の付いたリュックを背負っている。色々持ってきてくれたみたいだ。
「あれ?ご両親は?」
 居間を見回しながら、月乃さんが呟く。
「ああ、今日は親戚の家に二人とも出掛けてます」
「え~っ!聞いてない!そんなの聞いてない~!」
 いつもの感じに戻って、月乃さんが叫ぶ。
「すいません、今日は夜まで私一人です」
 そう言うと、月乃さんはまた紅くなった感じがする。
「き、聞いてない…二重の意味で聞いてない…」
 何か恥ずかしそうに俯いて小声で呟いた。

「かなり砂糖とバターを入れるんですね」
 家庭科の授業以外では殆ど使ったことのない、水色のチェック柄のエプロンを付けて、メモを持って学習スタイルの私。
「まあね~今回は特に作らないといけない数も多いし」
 材料を混ぜたり、冷蔵庫に入れたり、オーブンに入れたり、私も手伝いつつ、月乃さん主導で作業は進む。
「あ、定番の砂糖と塩を間違えるとかは禁止だからね。まあ、塩も使うからよそ見してて間違うとかはあるかも知れないから、それは気をつけて」
 ああ、そういうのは何かで見たことがあるかも知れない。
「でも、粒子の大きさ形状的には味の素の方が間違えやすそうにも見えますね」
「ああ~それは新しい視点かもね~」
 笑って答えつつも手は休めない。さすが手際が良い。ピンクエプロンの真ん中の、黄色いひよこが忙しげに揺れる。

「う~ん、ココアが足りない」
 手を休め、腕組みして月乃さんが眉を顰めて呟く。
「じゃあ、買いに行きましょうか?」
 私はエプロンを外して尋ねる。
「うん、買いに行こう。駅前のスーパーにお気に入りのがあるから」
 月乃さんもそう言って、エプロンを外す。
そうなると私の相棒、あいつの出番だ。

「ねえ、陽子」
「はい?」
 私は相棒に跨って、月乃さんの方を振り向く。
「二人乗りって良いのかな?」
 月乃さんは心配性だ。
「大丈夫ですって、危ないからちゃんと私に掴まってて下さいね」
「え、つ、掴まるって、ど、どこを…」
 今日はちょっと長めの白のスカートなので、私の後ろに横向きに座る月乃さんは、また紅くなっている。
今日の月乃さんは紅くなったり、白に戻ったり、今日の装いとも相まって、何だかピンク色な感じだ。
「まあ、腰の辺りでも…お好きなところを」
「こ、腰!す、好きなところ!?」
「はい」
 何を焦っているのかよくは解らないけど、月乃さんは恐る恐るといった感じで私の腰に手をまわしてきた。
月乃さんのしなやかな腕の感触が、腰に伝わり、お腹の辺りに柔らかな、ちょっと体温が低めの月乃さんの手のひらの感触が伝わる。
「じゃあ、行きますよ」
「はい」
 月乃さんは俯いて緊張気味に答えた。
私は良い気分で、昨日までよりも少し暖かい空気と、青い空の中を走りだした。

「月乃さん、今日は暖かいですね」
「うん」
 何か月乃さんの口数が少ない。
「あ、月乃さん水仙の花が咲いてますよ。でも、もうじき水仙の季節は終わりかな?」
「そうね」
 やっぱり何を言っても反応が薄い。それに反するように、月乃さんの手のひらは段々と暖かさを増していく感じがする。
何だかこの陽気とも相まって、とても心地良い。
「月乃さんの手も素手なのに段々暖かくなってきてますよ。もう完全に手袋のいらない陽気ですね」
「!?っ」
 月乃さんの手がより一層熱くなる。また顔も真っ赤だったりするのだろうか。
「あ、月乃さん梅の花が咲いてますよ。紅と白、今日の月乃さんと同じ桃色も」
 駅前に続く道の途中にあるお寺の敷地内の梅の花、まだ満開ではないけれど今日の陽気に押されたのか大分咲いていた。
「本当、綺麗~私と同じ色で何か嬉しいな」
「月乃さんの今日の服装可愛いですよ。月乃さんに凄く似あってます」
 梅の花を眺めながら、後ろに座る桃色の少女の面影を思い浮かべた。
「…あ、ありがとう」
 そう聞こえた後、背中にふわりと温かい柔らかな感触が、少しの重みと一緒に伝わってきた。
「春は近いですよ、月乃さん」
 そう言うと、背中の感触はさらに強さを増した。
「そうだね。もうすぐ春だね」
背中に感じられる月乃さんの感触が、とても嬉しい。

「じゃあ、今日はこれで帰るから。ご両親によろしくね。今度はちゃんとご挨拶いたします。って伝えておいてね」
 帰り支度を整え、玄関で靴をはく月乃さんが珍しく先輩らしい言葉を言う。
「解りました、今日はありがとうございました。でも、晩ご飯食べていかれても良いのに。もうすぐ両親帰ってきますし」
「いやいや、何て言うか自分の主義としてちゃんとしたご挨拶もせずに、いきなり晩御飯をごちそうになるのはNGだし」
 手のひらをひらひらとさせながら、やっぱり先輩らしいことを言う。
「あ、それと来週は今日作ったクッキー以外はあげたら駄目だからね。これ絶対」
 人差し指を私に向けて、念を押すようにそう言う。何だか頭を撫でたくなるポーズだけど、今撫でたら何となく怒られそうな気がするので止めておいた。
「はい、月乃さんと作ったクッキーだけが、私のホワイトデーのお返しです」
 無難にそう答えておいた。
「よろしい、じゃあねまた明日」
 今日一番の微笑を私に向けて、桃色の少女は帰っていった。
春の訪れの兆しを私に残して。



BGM
ハートのクッキー/くにたけみゆき
桃色/aiko
idol fancy/capsule
CANDY GIRL [ORIGINAL MIX]/hitomi

ミクさんが我が家にやってきた!ヽ(゚∀゚)ノ

DTMに手を出すのは5年ぶりぐらいか・・・。

自分のやりたいことに手が届くようにミクさんの力をお借りしながら頑張っていきたいところです| ´ω`|

今日はミクさんの日ですね~| ´ω`|(久々の普通の日記)

ニコ動も5周年とのことで…何もかも懐かしい(´-ω-`)

ミクさんの異常なまでの人気と存在感は、
現実をアニメの世界に追いつかせてしまいましたな。
「マクロスプラス」の「シャロン・アップル」とか思い出します。
バーチャルアイドルと言う概念は、
ミクさんによって現実のこの世界に具現化されました。
DK-96 伊達杏子は時代がちょっと早すぎましたね~。
ミクさんは声をあてた藤田咲さんとは全く別な、
確立された別人格としてこの世界に存在しているかのようなのがとんでもないです。
歴史的に考えていけば、この系譜の前に「伺か」があるかなあと思います。

ミクさんで一番好きなのは「メルト」ですな~。
これは初めて聴いた時からずっと変わらずに一番です。
でも、ミクさんに一番合ってるのはこれですな。
やっぱりミクさんの特性を一番活かすのは、
人間では到底追いつくことの出来ない限界越えた超スピードの電子音楽だと思うので。
なのでバラード系よりもテクノっぽいのや電子音楽っぽいのが個人的には大好きです。
ささくれさんの曲とかwowakaさんの曲なんかが自分的にはたまらないです。

5年前にニコ動で一番最初に観た動画は今も良く憶えています。
「新・豪血寺一族 -煩悩解放 - レッツゴー!陰陽師」です(笑)

せっかく久々にニコ動に戻ったので、
また活用し始めようかなと思うのです| ´ω`  |

百合団地シリーズ(仮) Vol.03 水踊姫

ZABADAKの吉良さんのツイートの「雨とペヤング」に影響されて、
短いですが突発的に1本書いてしまいました(笑)
タイトルは「水踊姫(すいようひめ)」と読んで下さい。
「Vol.02 雛結び」の二人の話です。
読んで頂けたら幸いです| ´ω`|
アイデアはいくらでも転がっているけれど、書く時間と文章力がまだまだ足りないのです…(;´Д`)
取り敢えず現在1時間に1200文字程度なので、もっと早く書けるようになりたい!U>ω<)ノ
文章力はとにかく精進するしかないですのう…(;・∀・)(苦笑)

↓ココから百合話

水踊姫

雨泉 洋悠

 それは朝から雨が降る、ある日の午後のこと。
 静けさの漂ういつもの室内。炬燵の上に乗せたマンガ本に視線を落とす私の耳に聞こえるのは、私と夜美の右方向にある窓の外から伝わる、規則正しい静かな滴のリズムと、私の横で眠る夜美の、同じく規則正しい呼吸音。
室内を照らすのは、窓の外から挿し込む鈍い光のみ。余計な光もなく、私の好きな音だけが漂う、心地よい空間。
私の腰の辺りには、夜美の愛らしい振動が伝わってくる。
 その振動が、徐々に規則正しさを失っていく、眠り姫の目覚めが近づいている。
数度、不規則な呼吸音を感じた後、言葉を伴う明確な意思が、私に響く。
「……焼きそばが食べたいかも」
眠り姫の目覚めの第一声は、傍らに傅く王子に向けてのものではなく、自らの内面についてのものだった。
まあ、いつものことだけど。
「おはよう、夜美。焼きそば食べたいの?今から作る?おやつの時間ではあるけれど」
 私は何度も頭の中で繰り返し、既に覚えこんでしまった二人の主人公の演奏を、その世界を閉じることで中断させる。
私にとって、とても大切な物語であっても、眠り姫の目覚めのご要望よりも勝ることはない、残念ながら。
私はこの空間のもう一つの流れを示す二本の針に目を向け、自らの言葉を確認する。
 夜美の言葉は、タイミングとしては丁度良い。
「うーん、何て言うかちゃんとした焼きそばでなくて、むしろカップの焼いてない焼きそばが食べたい」
 今日の眠り姫のご要望は、自らの調理の腕を伴う必要のないもののようだ。
だけども、一つ問題がある。私は夜美の方に顔だけ向き直る。
「構わないけれど、カップ焼きそばは夜美の家に買い置き無いよね?私の家にも無いと思うし。どうするの?」
 私は先程から少しだけ勢いの弱まった、滴のリズムを聞きつつ、半ば答えを予測しながらも、夜美に問い掛ける。
「買いに行きたい。雨も降っているし、二人で傘差しながら買いに行こう!」
 屈託の無い笑顔を私に向けて、魅力的な言葉を提示する。そう、夜美は少し弱めなぐらいの雨が好きなのだ。
もちろん、私もそう。
「解った、じゃあ行こうか」
「うん!」
 善は急げというやつか、お互いの言葉が重なると同時に、私も夜美も出掛ける準備を整えだした。

玄関を出て、一階から外に出る所で夜美の持ってきた傘を受け取って二人の頭上に差し掛ける。夜美のお気に入りの、オレンジ一色の、二人が充分入れる少し大きめの傘だ。
 隣に立つ夜美は、ふわふわもこもこのピンクのピーコート。夜美に良く似合っていて、私の好みに合っている、二人で買いに行ったいつものやつだ。
何だか嬉しそうで、鼻歌交じりでご機嫌だ。この曲は何の曲だったか。
私の方は、夜美のお母さんから貰った、黒のジャケットコート。夜美の好みに合わせた、いつものやつ。
滴から、細かな粒子に覆われたいつもの道を歩く。時折、広がる池を掻き分ける、夜美の足元からの和音が鼻歌に加わる。
いつものこと、夜美は水素を愛している。そして、水素に愛されている。

「夜美って、そう言うの大好きだよね。私にはとても無理」
 団地内の商店街にある、行きつけの個人商店。時代の流れか、微妙にコンビニっぽい。
夜美が選んだのは、最近出たという定番カップ焼きそばの激辛版。加えてスープにいつものワンタンの坦々版。
「うん、辛いもの好きー、彩月は辛いものは全然ダメだよね」
 その通り、私はどっちも夜美のチョイスの普通版。辛すぎるのはどうにも無理だ。
 買い物を済ませて、我が家に戻る。団地内の商店街だから、片道五分程度の二人散歩。
 周囲を満たす粒子は、濃度を変えることもなく、夜美の周りで踊る。

「ふんふんふんー。やっぱりーかやくは麺の下に敷かないとーダメだよねー」
 妙な鼻歌交じりに、焼きそばの準備をする夜美。外で粒子を全身に浴びたせいか、さっきまでよりも更にご機嫌状態だ。
「たいせつなものーながれてしまうーきがしてー」
 鼻歌に歌詞が混じったようだ、お湯を入れながら、どうにも最高潮にゴキゲンらしい。
このあと三分、シンクの前にて二人で待つ。

「湯切りのおとがー貴女を起こさぬようにー」
 先程までの歌の、続きっぽいものを歌いながら湯切りをする夜美。そろそろお約束の。
べこんっ
「あはは、鳴った鳴ったー」
 シンクが温度の変化で定番の音を出す。こんな音が鳴ったら、きっと夜美の歌に歌われている貴女も、起きてしまうだろうに。

 私の分の湯切りも済ませ、こちらも出来上がったワンタンと、いつもの飲み物と一緒にお盆に乗せて、炬燵の上に置いたら、いつもの位置に座る。
「ソースとーふりかけとースパイス入れて、ハイ出来上がり!」
 焼きそばの出来上がりと同時に、夜美の奇妙な歌も終了したようだ。
「じゃあ、いただきましょうー」
「はい、いただきます」
 しばし、二人とも食に没頭する。育ち盛りゆえ。

「彩月、ちょっとこれ食べてみなよ」
 そう言って、見るからに辛そうな自分の焼きそばを箸で取り上げて、私の方に示す。
「むうう、何か凄く辛そうな感じ」
 しかめっ面を夜美の手元に向けながら私は答える。
「大丈夫だって、そんなに辛くないよ」
「本当かな、まあ一口だけなら」
 そう答えると、私は口を開ける。
「うんうん、一口だけ」
 夜美の手で、焼きそばを口に入れてもらう。しばらく、自分の口の中で味わってみる。
「!?!、辛い!すっごく辛い!」
 思わず口元を抑える。感覚で言うなら火が出そうな感じだ。
「あはは、大丈夫彩月ーはいコーヒー」
 夜美が嬉しそうに差し出してくれたいつものコーヒーを飲んで、ようやく一息つく。
「やっぱり夜美とは舌の構造が全く違うみたい。これはもう私には辛すぎて駄目」
「うーん、そんなに辛くないと思ったんだけど。ごめんね」
 ちょっと心配そうな顔つきになって私の方を覗き込んでくる。少しフォローしてあげたくなったけど、もう二度と同じ事をしないで貰いたいので、何とか苦笑いしつつ、夜美の頭を撫でるだけで、我慢しておいた。

「いやー美味しかった。満足!ごちそうさまでした」
「うん、ごちそうさま」
 二人とも食べ終わって、食後のお茶時間。ふと気づけば、窓の外から聞こえていた音は完全に聞こえなくなっていた。
夜美が視線を窓の外に向ける。
「雨、止んじゃったみたいだねえ」
 ちょっと残念そうなのは、夜美にとって毎度のこと。夜美にとっては、古くからのお友達との、しばしのお別れなのだ。
 私は夜美の残念そうな心音に先回りすることにする。
「ちょっと、散歩行く?夜美、雨の止んだこの時間も大好きだものね?」
 夜美は、私の方に向き直って、いつものように嬉しそうに笑う。
雨が上がった後の、水素を含む空間もまた、夜美は愛しているのだ。
「うん!あ、久々に子供の頃に良く行ったあの神社まで歩いてみようよー時間的に暗くなる前に戻って来れる筈!後は、いつものスーパーとお店に寄って晩ご飯の買い物しようね。あとあと……」
 眠りの姫から、目覚めて水に愛される姫に戻った夜美は、その心の赴くままに、自らの望む水素を求めて、王子を引き連れて、歩き回ろうと思っているみたいだ。
はい、姫さま。仰せのままに、貴女の愛する、水素を求めて。



BGM
雨とペヤング/杉林恭雄、吉良知彦(ZABADAK)
水のルネス/ZABADAK
水のソルティレージュ/ZABADAK
水の踊り/ZABADAK
flow ~水の生まれた場所~/KOTOKO/I've

百合団地シリーズ(仮) Vol.02 雛結び

1日過ぎてしまいましたが、うるう年・ひな祭りで久々に書いてみました。
今回は前2作の二人とは違う二人です。
名前については「夜美(やよい)」「彩月(さつき)」と読んで下さい。
今回はBGMと内容があまり関係がないかも…本当に書く時聴いていただけの曲も多く入っています(笑)
読んで頂けたら幸いです| ´ω`|

↓ココから百合話

雛結び

雨泉 洋悠

 お雛様の隣って何でお内裏様何だろう。お雛様の隣にお雛様が居たって、別に問題無いだろうに。
少なくとも私は、私の隣にお内裏様なんていらない。世界で唯一人、私の心の大半を占める、あの子さえ隣に居ればそれで良い。
それをもしあの子に言ったなら、あの子はどんな顔をするだろう。

 それなりに寒く、他の月に比べて短い、今月の終わりの日の今日。
窓の外は灰色の空が広がり、朝から白い塊が降りしきる。視線を下げれば、この地域にしては珍しく、良く積もっている。
「夜美、今日お雛様出す?」
私は毎年の習慣の事を頭に新たに浮かべつつ、隣の席に座る幼馴染に声をかけた。
「うん、いつも通りに今日出すよー。それよりも今日は四年ぶりのあの日だよー何の日だったか、彩月ちゃんはちゃんと覚えてる?」
 とても嬉しそうな笑顔で、夜美は帰り支度する手を止めてこちらを振り返る。
夜美の特徴の、ふわふわにウェーブの掛かった、肩までのセミロングが同じく嬉しそうに跳ねる。今日の夜美も夜美の髪も、とても機嫌が良い。
「閏日」
 私は反射的に微笑み返してしまうのを堪えつつ、その上機嫌な気持ちに水を指す為に、敢えて一般常識に則った模範解答を返す。いつもの私達らしいやり取りだ。
「むーいや、そう言う一般的な回答を求めているんじゃなくてー」
 夜美は困ったような、私を非難するような表情と視線に変わる。夜美の、私好みの表情をいつも通りに見ることが出来て、私はとても満足だ。
いつも笑顔を絶やさない夜美なだけに、この顔だけは、私以外は滅多に見ることが出来ない。
「解ってるよ。四年に一度、今年で夜美は四歳、四度目の大切な正式な誕生日だ」
 夜美の表情を堪能してから、私は夜美の求めている答えを返す。
「そうそう、ちゃんとしたのはいつも通りにお雛様の日にやるけど今日は久々に二人きりでお祝いだねー」
 夜美が嬉しそうに言葉を返してくる。夜美の場合は、一度がっかりさせてからの笑顔の方が、より魅力的な事を知っているのは、私だけだ。
 夜美の誕生日は今日なので、例年はひな祭りに合わせて、家族ぐるみでお祝いしている。
忙しい夜美のお母さんが、せめて夜美の誕生日は全員揃って祝いたいと、色々模索しながら考えだした、苦肉の策とも言える。
それはうるう年である今年も変わらない。もちろん、朝から家族に祝福されてはいるし、今日もそれなりにお祝いはしているのではあろうけれど、それとは別に四年に一度、私達は二人だけでお祝いをする。
それは二回前、年月を八年遡る今日。二人でお雛様の前で、決めた約束だ。
「今日もねえ、お母さん帰り遅いんだよねー」
 夜美は残念そうに言う、でも悲壮感はない。仕方ないなあ、そんな感じの態度だ。
夜美の、両親への深い愛情と信頼。加えて自分的には、私と二人でお祝いすることへの喜びも入っているかなと、勝手に感じる。
「じゃあ、お雛様も私達だけで飾ろうか。晩ご飯はどうする?家で食べる?」
 そう言いながら、私は鞄を持って帰る姿勢になる。
「そうだなあーその時次第で。彩月ちゃんのお母さんのご飯も好きだけど、今日は彩月ちゃんに私の御飯食べてもらいたい気もするし」
 夜美は難しい所だと言わんばかりに悩み顔だ。
「あ、陽子ちゃん。また明日ー」
 夜美が教室を出ていくクラスメイトに手を振りながら声をかける。
「さようなら夜美さん、また明日。彩月さんも、またね」
 夜美の声に反応して振り返る陽子さんの、ストレートな長い髪が、さらさらと風に踊った。
「またね、陽子さん」
陽子さんを見る夜美の視線に、少なくない憧れが含まれているのを知っているのは私だけ。
「陽子ちゃんの髪、キレイだよねー。いつ見ても素敵。何と言っても…」
 黒髪和風美人、数学の成績は学年トップ、運動全般球技含めて大得意。夜美が憧れるには申し分ない素敵な人。それが、月島陽子さん。
「そうだね、私達もそろそろ行こう」
 夜美の言葉を遮って、私は夜美を置いていくように歩き出す。
「あ、待ってよー。あ、帰りにケーキ買っていこうねー。プレゼント楽しみー」
 屈託ない笑顔を浮かべているであろう弾んだ声を、後ろに聞きながら、私は教室を出た。
廊下側の窓から見える外の風景もまた、灰色の空と降り積もった一面の白。白い塊は灰色の空の気まぐれのまま、おさまっているようだ。

 クロス歩道橋を通り、21号棟について、3階まで上がる。夜美と二人で歩く、いつもの道のり。
二つ横に並んだ青いドアの上。右は龍上と書かれた我が家。左は中原と書かれた、もう一つの我が家だ。夜美が左のドアを開ける。
「ただいまー」
 夜美の元気の良い声が、室内に響いた。
「ただいま」
 その後ろに付き従いながら、私も夜美と同じ言葉を繰り返した。

 炬燵に入りながら、夜美と二人で飾り終えた、私の右斜め前、夜美の席の真後ろのお雛様を眺める。夜美のお雛様は七段飾りでもの凄く立派だ。
「彩月ちゃんは紅茶が良いかな?それともコーヒーが良い?」
 台所の方から、夜美の声が聞こえる。夜美の高い声は、静かな室内に良く響く。
「紅茶でお願い」
 私の声はそれほど高くないので、夜美の高い声は羨ましくもある。夜美の外見に合う、軽やかな声だといつも思う。
「私はコーヒー。あ、甘酒もあるよ。一緒に持っていくね」
 暫くすると、制服の上からひよこのあしらわれた見慣れたエプロンをした夜美が、珈琲と紅茶、甘酒と、帰りに買ってきたケーキをそれぞれお皿にのせて、お盆で持ってきてくれた。
「夜美は甘いもの好きな割にはコーヒーはブラックで飲めるよね。私には無理」
 いつも通り、お盆には私の分の砂糖とミルクしかのっていなかった。
「えーそう?ケーキは甘いから飲み物は甘くなくても平気なんだよねー変かな?」
 持ってきたものを炬燵の上に置き換えながら、夜美が上目遣いで聞いてくる。こういう仕草は夜美に良く似合う。
「いや、それもまた夜美らしさかなと思うし、良いと思うよ」
 ブラックを飲んで苦そうにしている夜美は既に、私の中では想像もつかない。
「えへへ、ありがと」
 夜美は意外と何でも平然と越えて行ってしまうタイプかなと思う。夜美が自分の席に改めて座る。
「夜美、誕生日おめでとう。これプレゼント」
 私は、手のひらサイズの小さな包みを夜美に手渡す。
「わ、ありがとう。今年はどんなのかなあ」
 そう言って、夜美は嬉しそうに笑う。
「開けてみて。今年もこないだ見せてもらった着物の柄に合わせたよ。夜美とあの振袖には良く似合うと思う」
 私の言葉に促されて、夜美はその包みを開ける。
「わ、可愛い」
 小さな水色の、五枚の花びらの花簪。毎年簪を送っているけれど、今回は四年間アイデアを温めて、今日という日に合わせて、夜美の為に選んだ。色々な想いを込めて。
「ありがとう、いつも通りにひな祭りの時に付けるね」
 この喜びの笑顔は、今は私だけのもの。いつか、私以外……にも見せるのだろうか。

 いつものフォークで、お気に入りのオペラをつつきながら、ミルフィーユを崩しながら満面の笑みで口に運ぶ夜美を眺める。
エプロンは外して、右脇に置いている。夜美は、ケーキは甘すぎるぐらいのものが好きだ。
私は甘すぎるのは苦手で、チョコレート系の甘さ控えめのものを選ぶことが多い。今日のオペラはその中では甘めの選択だ。
私はいつまでこうして特等席で夜美の嬉しそうな顔を観ていられるだろうか。
四月に高校に入学してから、夜美の視線の先に、同じ人がいることが多くなった。
夜美はみんなと分け隔てなく接するので、今までにはそういう事はなかった。気付いているのもきっと私ぐらい。
「甘酒飲んだら眠くなってきちゃったー」
 夜美は、あらかたケーキを片付けた後、そう言って横になった。
「制服皺になるよ。それに、食べて直ぐ寝ると牛になる」
 その牛もまた、夜美なわけだから可愛さは変わらないのだろうけど。
「モーモー。お腹空いたら起こして良いよー」
 私の方を向いて目を閉じて、そう言うと直ぐに寝息を立て始めた。夜美は昔から寝付きがいい。
私の正面の位置にある窓の外を見ると、白い欠片がまた、灰色の空の気まぐれのままにちらつき始めている。
私は、いつも通りに夜美の部屋に入ると、肌掛けを一枚押し入れから出してくる。夜美のお気に入りの、オレンジ色のやつだ。
炬燵に戻ってくると、私は夜美に肌掛けを掛けてやりながら、夜美の隣に潜り込む。
「ん、う」
 夜美はそんな言葉を漏らしながらも、起きる気配なく寝息を立て続ける。私はいつものように、夜美の胸に顔を埋める。
夜美の命の音が、耳に届く。この場所が私は一番安心して眠れるのだ。
お雛様の元、夜美の音と微かな白い欠片の音を聞きながら、私もまた夜美と同じ世界へと落ちていった。

 目が覚めると、夜美の胸の中、身動き取れない状態になっていた。
何だかいつもと違う。
いつもなら、私が起きた後、夜美を起こして、晩ご飯を作ってもらって二人か、もしくは帰ってきた夜美のお母さんと一緒に食べる。
なのに何故か、今日は身動きが取れない。何だか夜美の胸元にがっちりと捕まえられているような感覚がある。夜美の胸はそこまで大きくない筈なのにおかしい。
嬉しいけどおかしい、変な感じだ。
夜美から顔を離そうとすると、嫌と言うかのように締め付けが厳しくなる。胸元から私を離さないと言う感じだ。状況としては、夜美が両手で胸元に抱きとめて、頭を撫でたり、髪をいじったりしているみたいだ。何だか恥ずかしい、自分の頬が紅くなるのを感じる。
「夜美、起きてるの?ちょ、ちょっと離して」
 夜美が何らかの意思を持って、私を胸元から話さないでいると思われたので、そのままの体勢で夜美に声をかける。
「ヤダ」
 夜美からは一言しか返って来なかった。何か怒っているようにも聞こえる。締め付けもより一層厳しくなった感じがする。
「やだって、どうしたの夜美。何か、怒ってる?」
 声のトーンで怒っているのは感じ取れるけど、怒られている理由が解らない。これは、ちゃんと話を聞いて、私のお姫さまのお怒りを沈めないといけないと思った。
状況的には別に嬉しいのだけれども。
「怒ってる」
 怒ってる割には嬉しそうな感じも混じっているのだけど、きっと私にしか解らないレベルだとは思う。
「ええと、すいません夜美様」
「何に対して謝って、いるのかな?」
 ちょっとだけ声のトーンが怖くなった。いや、可愛さは変わらないけれども。
たまに夜美の機嫌を損ねることはあるけれども、これはいつも以上かも知れない。ここは素直になり夜美にちゃんと話して貰った方が良さそうだ。
「ごめんなさい、解りません。教えて下さい夜美様」
 そう言えば、夜美様何て言ったの何年ぶりだろう。
「よろしい、とにかくね、最近の彩月はおかしい。今月半ば、そうバレンタインぐらいから何か拗ねていると言うか、可愛くない感じ」
 夜美に彩月って呼ばれるのも、何年ぶりな気がする。
「加えて、たまに私の前でも寂しそうな顔をする。何かあったの?その、時期的にも、し、失恋とか」
 最後は妙にトーンの上がった声になっていた。ああ、これはもう正直に言うしか無いかなあ。
私は意を決する事にする。夜美を不安にさせるぐらいなら正直に言った方が良い。
少しの沈黙の間、白い欠片の音だけが二人を包む。次に口を開いたのは二人同時だった。
「前に行ってた部活の先輩と何かあった?」
「夜美にだよ」
 ん?誰だって?また同時に口を開く。
「私?!誰が私に?!」
「部活の先輩って誰のこと?」
 そこまで答えないといけないと。
「音無先輩」
「私が夜美に」
 なんか変だ、話が噛み合ってるのか食い違ってるのか良く解らない。その後の一言は二人共同じだった。
『ちょっと待って、話が噛み合ってない!誰が誰に?!』

「えーと、つまり音無先輩には日頃のお礼をしただけと」
 未だ胸元から離して貰えない状態で、出てきた断片的な情報から、夜美が話をまとめ始める。
「で、彩月は私に好きな人が出来たと思っていたと。で、その相手は陽子ちゃんだと」
 自分の心の内を自分の前でさらけ出されていくのは、なんとも気恥ずかしい。
「はい、その通りです」
 頭上から呆れたようなため息と、夜美の声が聞こえる。
「はあ、どこをどうしたらそんな勘違いを。私だって陽子ちゃんには日頃のお礼をしただけなのに」
 そうだったのか。でも何のお礼だろう。
「日頃って、何のお礼?」
「うーん。まあ、良いか私も正直に言う。彩月のことに決まってるじゃない。最近元気なかったりするし」
 何と、そういう事でしたか。
「そういう事だったとは、でも何か陽子さんのこと特別な目で見てたりとかしてたじゃない?特に髪とか」
「ああ、それは陽子ちゃんの髪凄く綺麗だから、誰かさんの髪と同じでね」
 そう言って、抱き締めたままの私の髪を夜美は優しく撫でる。
「手入れの仕方とか、教えてもらってたんだよ。最近彩月は触らせてくれなかったけど」
「そ、それは。陽子さんに勝てないとか何とか気持ちの置所が色々と…」
 最後ははっきりしない感じになった。何とも。
「何言ってるのか。彩月の髪は昔から陽子ちゃんと同じぐらいに綺麗じゃない。四年前に、大好きって言ったのも、私のものって言ったのも忘れたの?おバカさんね」
 そうでしたか、それはすっかり忘れていました。でも、確かに四年前からほとんど切らなくなっていた気がする。それがきっかけだったか。
「申し訳ない、すっかり忘れていました。返す言葉もございません」
「私のために伸ばしてくれているのかと思ってたらさ、最近触らせてくれなくなって、先輩が出てきて色々考えちゃったのよねー。だって、彩月ああいうタイプ好きでしょ。私に似てるもの。音無先輩」
 ああ、そこは良く解っていらっしゃる。さすが、夜美。でも一つ間違い。
「そうだね。でも、夜美より音無先輩を好きになることはないよ絶対に」
「いつもそう言ってくれていれば勘違いなんかしないのに。毎日ずっと一緒にいるのに、私もだけど、言葉が足りないね。彩月は」
 呆れたように言いながら、私の頭を撫で回す。ああ、今日は一週周って幸せ過ぎるかも。
「今回の簪の意味も解ったよー。て言うか、教えてあげたの私じゃない。これは八年前かな?それも忘れていたでしょ?」
「うん、夜美から教えてもらったことはすっかり」
 もう幸せいっぱいなので、素直にスラスラ喋った。
「何ともね私の想いに反したおバカさんです事。もう今日はこの簪は彩月にさしてやる。結ったりなんかしないで超適当に」
 今日はもう、全部夜美に任せる事にする。私はもう幸せに浮かれすぎているので夜美のやること何でもオッケー。
「了解しました。夜美様の仰せのままに」
 窓の外は既に暗くなり、音だけが白い欠片の存在を私達に示していた。
夜美の音と混じり合いながら。

 しこたま二人でじゃれ合った後、夜美は起き上がって晩ご飯の用意をした。
それから、お雛様の前に戻ってきて、お内裏様と三人官女の真ん中の人形を入れ替えて言った。
「これも忘れてたでしょ?私のお雛様は、四年前からお内裏様の位置に女の子が入るの」
 これはちょっと思い出した。一昨年と去年はすっかり忘れて普通に飾ってしまったけど。
「どっちがどっち?」
 私がそう聞くと、夜美は悪戯っぽく笑いながら言った。
「私がお雛様に決まっているでしょ?彩月はお雛様に見初められた三人官女。お内裏様も両手に花だし、これで円満解決なのよ」
 なるほど、そこまでは私では思いが至らなかった。お内裏様の存在、完全に眼中に無かったよ。
感心した素振りでいると、夜美の声に良く似た、夜美よりも少し低い声が玄関から響いてきた。
「ただいまー」
 私と夜美は、二人争うようにかけて行って、夜美のお母さんをお迎えした。
『おかえりなさい』

 晩御飯の間、夜美のお母さんは私の頭に適当にさされた簪を、面白おかしそうに、不思議そうに見ていた。



BGM

うれしいひなまつり
血塗られたひな祭り/人間椅子
ふしぎデカルト/相対性理論
おはようオーパーツ/相対性理論
灰色の水曜日/TRIPLE H
          ARB
Private Girl/TRIPLE H
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