二人の物語~私達を照らす星の光、あの日の滴~(ラブライブ 二次創作 短編 にこまき)/雨泉洋悠

   二人の物語
   ~私達を照らす星の光、あの日の滴~
              雨泉 洋悠

 星の光が降りて来る。
 私と貴女に、落ちて来る。

「で、にこちゃん、どうするの?」
 皆との通話を終えて、電話を切った後、真姫ちゃんが私を見つめながら、問い掛ける。
 ちょっとだけ、不安と憂いを含んだ、その高貴な色の瞳は、光に照らされていて、とても綺麗。

 私は、真姫ちゃんのこの瞳が、眼が、凄く好き。

 今日の格好は、ちょっとボーイッシュで、真姫ちゃんが持つ、少しだけ男の子っぽい部分と相まって、何時もの真姫ちゃんとは、少し違って、格好良くて、でも何時もとやっぱり同じで、可愛い。
 真姫ちゃんは、やっぱり、天然お洒落さんだなあ。
 こんなにも可愛くて、格好良くて、素敵な真姫ちゃんが、私を好きだって、言ってくれた。
「にこちゃんてば、今日は昼間からちょっと変。皆の前では、いつも通りって言ってたのに……」
 私、その言葉に、舞い上がっちゃってるのかなあ。
 そう言いながら、恥ずかしそうに、何時もの様に自分の赤髪の房を弄りながら、目を逸らしてしまう、真姫ちゃん。
 昼間に、思わず抱き着いた時の、真姫ちゃんの言葉。
 その言葉が嬉しくて、考えるよりも先に、身体が先に動いちゃったけど、その後の穂乃果の言葉への、真姫ちゃんの反応は、今までと変わらなかった。
 真姫ちゃんにとっての穂乃果は、やっぱりそれぐらい大きな存在で、それは私にとっての穂乃果への想いと、重みはきっと同じぐらいで、真姫ちゃんが私の事を好きだと言ってくれても、その部分に関してだけは、もしかしたら穂乃果にずっと敵わないのかも、知れない。
 私は、ラブライブに出たい。
 穂乃果は、出なくても、良いって言う。
 真姫ちゃんは、穂乃果がそう言うなら、仕方ないって言う。
 真姫ちゃんの横顔、この場所を照らす、光の中で、赤く染まっている頬が、見慣れない格好の力もあって、何時も以上に可愛く見える。

 ああ、もう、こんなのどうしようもない。

 無意識に、近づく、真姫ちゃんの横顔。
 真姫ちゃんがその距離を感じて、こちらを向いた時には、その戸惑いの瞳は、私の視界から外れた。
「にこちゃん、今日はやっぱり、変」
 そう言いながらも、真姫ちゃんは、私を優しく、受け入れてくれる。
 腰の辺りに回された、真姫ちゃんの両手の暖かさが、心地良い。
 私の両手を回した、真姫ちゃんの背中は、ママの背中よりもちょっとだけ広い感じだけど、あの日の背中よりは、ちょっとだけ小くて、やっぱり女の子らしい滑らかさを感じさせて、こちらの暖かさも、心地良い。
 あの日以来、真姫ちゃんに甘えて貰えるのが嬉しくて、二人で寝ている時も、今日みたいに私の方からくっつくことなんて、殆ど無かったから、真姫ちゃん、かなり本気で、戸惑っている。
「にこちゃん、どうしちゃったの?」
 耳の近くに聞こえる、真姫ちゃんの心の音で、解る。
 真姫ちゃんの目線と、背の高さに合わせたくて、少しは格好良く見せたくて、ちょっと高めのヒール履いて来たけど、結果的にこうなるなら、履いてきて失敗だったかな。
 私の背が、何時もよりも高いせいで、私の顔の位置が、思っていた所に上手いこと来なくて、少し、くっつき辛い。
「真姫ちゃん」
 好き。
 こんなにも、どうしようもなく溢れてしまっている、私の気持ち、真姫ちゃんに、ちゃんと届いているのかな。
「にこちゃん、今日はやっぱり、変」
 戸惑いがちな声を漏らしながらも、決して振り解いたりはしないで、受け止め続けてくれる真姫ちゃん。
 こんなの、真姫ちゃんに見せたい、真姫ちゃんの知ってる、私じゃないの。
 解ってるの、見せたくないの、でも、駄目なの。
 止まらなくて、止められないの。
「真姫ちゃん」
 大好き。
 私は、真姫ちゃんの前では、格好良い先輩で、頼れる部長でいたくて、強い矢澤にこでいたい。
 でも、こんな日の夜には、どうしたら良いのか、解らなくなる。

 真姫ちゃんは、最後には、私を選んでくれないかも知れない。

 真姫ちゃんが、本当は歳相応にまだまだ、ずっと幼くて、良い意味で、まだまだ子供だって、解ってる。
 今日の事だって、難しく考え過ぎなくたって、良いのかも知れない。
 でも、もう駄目なの。
 もう、止まらないの。
 真姫ちゃんは、私の事を好きって言ってくれた。
 それだけで、充分だったはずなのに。
「にこちゃん」
 私を抱き留めてくれる、真姫ちゃんが優しすぎて、その優しさが、時々とても苦しい。
 普段の、ツンツンしている真姫ちゃんも好きな筈なのに、穂乃果が間に居るだけで、こんなにも、切なくなる。
 私にとっても、穂乃果は、大切なはずなのに。
 真姫ちゃんに、今以上のものを、全部を望むなんて、ただ私が、贅沢なだけなのかも知れない。
 このままじゃ、いつか私は、真姫ちゃんを傷つけて、真姫ちゃんを苦しめるかも知れない。
 そんな事したくない、私はただ、真姫ちゃんを好きでいたい、だけなのに。
 その気持ちを私は、どう上手く、真姫ちゃんに伝えていけば良いのか、解らない。
 家族以外の、大好きな人に、どんな形で、どんな風に好きを伝えていけば良いのか、どうすれば私の好きを、全部真姫ちゃんに伝えられるのか。
 真姫ちゃんが、私を好きでいてくれる事が、私にとって、どれだけ幸せで、どれだけ嬉しい事か、全部簡単に、伝われば良いのに。
「にこちゃん、ちょっと身体冷たい。そんな薄着してくるから。まだ夏は終わっていないけど、夜は少し冷えるから、気を付けて」
 大丈夫だよ、真姫ちゃん。
 真姫ちゃんは、何時だって、暖かいから。
「真姫ちゃん」
 言葉って難しいね、伝えたいものが多過ぎる程に、何も言えなくなっちゃう。
「でも、可愛い。にこちゃん、そう言う格好も、似合うよ」
 真姫ちゃんきっと今、凄く恥ずかしそうな顔して、言ってくれてる。
 真姫ちゃんが、嬉しい言葉を伝えてくれる程に、私の中から、真姫ちゃんに伝える言葉が、無くなっていっちゃう。
「真姫ちゃん」
 真姫ちゃんの、ちょっと男の子っぽい格好も、可愛いよ。
 言葉の代わりに、背中に回した手に、少し力を込める。
 真姫ちゃんの、何時もの香りと、一緒に寝る時に、感じる事が出来る、真姫ちゃんの匂い。
 この中にずっといたい、私何時も、真姫ちゃんの前で、そんな事ばっかり、考えてる。
「にこちゃん」
 でも、それが叶ったとしても、それだけじゃもう、足りないの。
 歌っている時の、踊っている時の、きっと真姫ちゃんが、一番輝いている時だと、私は信じているから、そんな真姫ちゃんを、もっと、私は見ていたい。
 このまま、ラブライブに出ないで、希が一緒に過ごしてくれた日々を、穂乃果に引っ張って貰って、ことりと海未に引っ張って貰った日々を、絵里にもっと高い場所に連れて行って貰えた日々を、一番辛かった時間を支えてくれた花陽と凛と、ミューズの皆と出会えてからの日々を、何よりも、真姫ちゃんと出会えてからの、全ての幸せを、私に与えてくれた日々を、何の形にも残さないままで、卒業、したく、無い。
 私が一人にしてしまった、アイドル研究部に、諦めかけていた私に、もう一度皆で、九人で一緒に過ごす日々をくれた皆に、この部活で、何かをやり遂げた結果を、みんなに残したい。

 真姫ちゃんに、残したい。

 それには、ラブライブしかないの、私にはアイドルしか無いから、それしか思いつけないし、それしか無いの。
 それは、私の我儘。
 だから、今は真姫ちゃんに、そのことに関しても、何も言えないの。
「真姫ちゃん、時間、遅く、なっちゃったから、家まで送るから、もう少し……」
 これだけ、私が今日、真姫ちゃんに望む、ただ、一つだけのワガママ。
「……うん、にこちゃん、今日も泊まっていって、今日のにこちゃん、やっぱり、変だから、送って貰った後の、もっと暗くなった中を、帰したくないし」
 真姫ちゃんが、私のワガママを許してくれる程に、私はやっぱり、贅沢に、貪欲になっていってしまう。
「真姫ちゃん」
 ごめんね、ワガママな先輩で、我儘なにこで。

 私今、真姫ちゃんの全部が、何もかもが、欲しいの。

 あの日と同じ、雨が降る。
 あの日と同じ、貴女の心が、滴に濡れているの。

 あの日と同じ音が、私とにこちゃんの、周りを包む。
 軽い手当、あの日と同じ、私の役割。
 感じるのは、にこちゃんの心の、少しの不安と、切ない想い。
「にこちゃん、やっぱり今日も変」
 解って来た、にこちゃんの想い。
 にこちゃんは、そっぽ向いちゃったまま、膨れっ面で、あの日と同じ。
 にこちゃんは、何も言わない。
 それがにこちゃんの、きっと強さでもありつつ、弱さでもあるんだと思う。
 にこちゃんは、そう言った、自分の想いとか、弱い部分とか、余り表に出さない。
 特にやっぱり私には、中々、話してくれない。

 何より、あの日以来、にこちゃんには、好きって、言って貰えてない。

 昨日のあれは特別で、甘えてくるにこちゃんなんて、あの日以来初めてで、恥ずかしかったし、びっくりした。
 きっと、にこちゃんに胸の鼓動が激しくなるのを、ずっと聞かれちゃってた。
 結局その後は、何時も見たいに、一緒に寝たけど、何時もと変わらずに、私のほうが甘えるだけだった。
 けど、あんな事があれば、私だって、いくらなんでもにこちゃんが私の事を、少なからず、好きだって、想ってくれているのは、解る。
 でも、悩みとか、弱い部分とかを、私に見せてくれないのは、きっと希になら見せられるんだろうな、というマイナスな気持ちと相まってしまって、少し、さみしい。
 私は、にこちゃんよりも、二つも歳下だけど、それでも、時にはにこちゃんに、頼ってもらったり、甘えてもらったり、したいなんて、恥ずかしいけど、思ったりもする。
 きっと、私は、希に比べたら、まだまだにこちゃんが頼れるほどには、自分でも解らない部分で、大人になれていないんだと思う。
 昨日のにこちゃんの、行動や態度は、全部繋がっていて、一つの答えが、さっきのにこちゃんと穂乃果の、二人の勝負だったんだと思う。
 その向こう側の、にこちゃんの想いを、思う程に、私の心は切なくなる。
 にこちゃんは、ラブライブに出たい。
 でもそれは、単に自分の為じゃなくて、私達の為でもあって、にこちゃんにとって、凄く大切な事。
 雨の滴に、少し濡れている、にこちゃんの綺麗な黒髪と、そこに何時も咲いている、赤い花。
 私はハンカチを取り出して、その黒髪と、赤い花を、拭いてあげる。
 今露骨に、にこちゃんの頭を撫でたりしたら、もしかしたらにこちゃん、怒っちゃうかもしれないから、こっそり拭きながら。
「にこちゃん、気を付けてね。にこちゃんの顔に傷が残ったら、私が泣くからね」
 にこちゃん、膨れっ面のままだけど、やっとこっち向いてくれた。
「あの日と同じね、にこちゃん。可愛い顔、台無しにしないでね」
 あの日と違って、素直に言える言葉。
 もちろん、にこちゃんだけが聞いてくれているから、言えることだけど。
 皆に聞かれていたら、やっぱり恥ずかしいし。
「真姫ちゃん、私、やっぱり、ラブライブに出たいの」
 にこちゃん、らしくなく申し訳無さそうな顔になって、呟く。
「うん」
 ワガママだね、にこちゃん。
 にこちゃん、またぷいっと横を向く。
「にこはね、皆と、真姫ちゃんと一緒に、ラブライブに出たいの。今しか、出来ないことなの」
 でも、そんなにこちゃんの、自分を顧みない、ガムシャラなワガママ、大好きだよ。
 私が撫でる度に、ぴょこぴょこ動く、赤い花。
「にこちゃん」
 こっそり触れてみると、滑らかに私の手の平から解けていく、にこちゃんの、綺麗な黒髪。
 本当はもっと触りたいなんて言ったら、にこちゃんに怒られちゃうかな。
 それでも、もうこんな少しの時間のチャンスにも、触れたくなってしまうんだから、きっと私はもう、止まれないような、気がするの。

 にこちゃんへの想い、昨日みたいなことが続けば、きっともう、止められないの。

次回


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