二人の物語~夏の終わり、二人の想いをもう一度~(ラブライブ 二次創作 短編 にこまき)/雨泉洋悠

   二人の物語~夏の終わり、二人の想いをもう一度~
              雨泉 洋悠

 夏の終わりに、また大切な人を好きになりました。

 オレンジ色から、徐々に藍色から黒へと変化していく空の下、絵里と、真姫ちゃんと三人、周囲を照らす赤い光を見つめる。
 それは、真姫ちゃんが持つ色と同じで、とても情熱的な色。
 真姫ちゃんは、私の直ぐ隣に、膝を抱えて座ってくれている。
 真姫ちゃんは、何時だって私を気に掛けて、隣に居るようにしてくれている。
 それが私には、とても嬉しいけれども、今日は何となく、二人きりの時みたいに、何か甘えたい気持ちを、抱えていそうに感じる、
 真姫ちゃんは、何か心に気懸かりがある時には、私の方に、少し近すぎるくらいに、近くに来たりする。
 まあ、今日は絵里もいるから、二人して部活モードだけども、真姫ちゃんが今日はちょっと悩んでいるのが、いまもちゃんと伝わってくる。
 真姫ちゃんはきっと、絵里や、希や、私の為に、今日はそんな風に、気負ってしまっているのかなあと思う。
 真姫ちゃんの、素敵で、魅力的な部分であると同時に、時に彼女の自由であるべき心に、少なくない枷を、与えてしまう。
 真姫ちゃんがそうやって、卒業が避けられない私達の事を、最優先に考えて、その綺麗すぎるぐらいの、時にとても魅力的に幼く、純粋な、その心の音を、使おうとしてくれることはとても嬉しい。
 でも、それによって、結果的に真姫ちゃんの心が、縛られてしまうのは、私達三人にとって、望むべきことじゃなくて。
 真姫ちゃん、私はね、もっと真姫ちゃんには、自由に心の翼を広げて欲しいの。
 貴女にしか生み出せない音が、どれだけ私達の、私の心に、沢山の大切なものをくれたことか。
 真姫ちゃんには、そのままの、真姫ちゃん自身が思うままの、心のままに、曲を作って欲しい。
 それは別に、いま真姫ちゃんが大切にしてくれようとしているものを、蔑ろにすることを促しているんじゃなくて、そこに気負いがないように、してあげたいだけなんだけど。
 こないだもそうだったけど、こういう事って、どうやったら、上手く真姫ちゃんに伝えられるかな。
 私もまだまだ、真姫ちゃんの、先輩らしく、部長らしく、なれていないなあ。
 そんな事を考えているうちに、絵里が良く解からないことを言いながら、テントの中に引きこもってしまった。
 真姫ちゃんも言うように、絵里は暗いのが怖いのね。
 まあ今日は、希も別行動だしね。
 そんな事を真姫ちゃんと話していたら、火がちょっと弱まってしまって、焦る。
 火は大丈夫だったけど、真姫ちゃんにあまり格好良くないところを、また見られちゃった。
 すかさず、真姫ちゃんが、何時もの調子で、呆れ顔で突っついてくる。
「まったくー、こんな三年生の為に、曲考える方の身にもなってよ」
 こんな感じの真姫ちゃんも、可愛いけれども、今日、真姫ちゃんに伝えたいことを伝えるなら、ここかなと思った。
「えぇっ?」
 珍しく、ちょっと咎めるように、聞き返してみる。
「今、何て言った?」
 びっくりしている真姫ちゃん、良し、畳み掛けるわよ。
「今、三年生の為って言ったわよね?」
 やっぱりね、真姫ちゃん、気負いすぎ、嬉しいけど、そうじゃないんだよ、真姫ちゃん。
「曲はいつも、どんな時も、全員の為にあるのよ」
 そっぽ向いて、偉そうにとか言っちゃってる真姫ちゃん、でもそんなこと言いつつも、その横顔が、ちょっと赤いのは、きっと、赤髪の房が何時も以上に赤いのが焚き火のせいであっても、それは焚き火のせいだけじゃ、ないと思うんだ。
 私はさ、部長だからね、真姫ちゃん。
 皆のこと、真姫ちゃんの事、私には全部大事なの。
 そうこうしているうちに、お芋が焼けたみたい。
 一つ取り出してみる、真姫ちゃん、もしかしたら、こういう事ってやったこと無いんじゃないかな。
 焼き芋を受け取って、熱がる真姫ちゃん、焼き芋を冷まそうとする真姫ちゃん、そんな慌てた感じの真姫ちゃんの横顔も可愛くて、ずっと眺めていたいなと思う。
「はい」
 焼き芋を二つに割って、唐突に私に差し出してくれる、真姫ちゃん。
 真姫ちゃんの、その高貴な色の瞳が、真摯に私だけのことを、見つめてくれている。
 両手を差し出して、それを受け取る時、不意に指と指が触れ合って、何だか気恥ずかしかった。
 二人っきりの時には、色んな事話したり、一緒に寝たりして、真姫ちゃんが甘えてくれたり、私が抱き着いたりもするのに、そういうのとはまた少し違って、何だかちょっと、照れくさくて、心地良いね。
 心がまた、真姫ちゃんに、反応して、高鳴る感じ。
 心の奥にまた、新しく降り積もるようで、暖かいね。
「あ、ありがと」
 真姫ちゃんと、こんな風に、気恥ずかしい感じの中で、焼き芋を一緒に食べる未来なんて、また来るとは、思ってもみなかったな。
 まるで、真姫ちゃんと、初めて会った、頃みたい。
 こんなの恥ずかしいから、何時もの、部活での、ミューズでの二人に戻るの。
 真姫ちゃんは台無しって言うけど、解ってるよ、台無しじゃないよね、真姫ちゃんが、私の言葉で、何かを感じてくれたこと、嬉しかったよ。
 真姫ちゃんの作ってくれる曲、楽しみにしているからね。

 貴女は、私に、曲はみんなの為にあると、教えてくれました。
 だから私は、貴女の為に。

 絵里とにこちゃんが、寝ついた後、一人別荘に戻って、ピアノの音に、耳を傾ける。
 自然と心から溢れ出る音に、指の動きを合わせる。
 心の底から想いが溢れ返って、音が止まらない。
「いつも、どんな時も、全員の為に、か」
 にこちゃんはどうして、こんなにも私を嬉しくさせることを、言ってくれるのかな。
 私を大切に思ってくれているにこちゃんの心が嬉しくて、どうしたって、にこちゃんの事ばかり考えてしまう。
 でも、それだけじゃ駄目なの、にこちゃんが教えてくれた通りに、にこちゃんのためだけじゃなくて、皆の為に、曲を作るの。
 私の大好きな音楽で、私が皆の力になれるなら、幾らでも、何でも、皆の為に捧げたいの。
 それでもね、それでもやっぱり、にこちゃんは私にとって、凄く大切で、とても愛おしくて、大好きで、想いが溢れて、もうどうしたって、止まらないの。
 だから、この曲は、今の私の想いを、全部込めたこの曲は、皆の為に作った上で、にこちゃんの為に作るの。
 頑張ってきたにこちゃんの、その頑張りが、ちゃんと一つの答えに辿り着いた時に、この曲を、皆に、にこちゃんに上げたいの。
 にこちゃんに、受け取って欲しいの。
 私はにこちゃんの事が、大好きだって。
 私のにこちゃんへの想いが、最終的に辿り着いた最後の音の後、先程部屋の中に来ていた、海未とことりが、私の肩を叩いた。

 もう一度、恋をしよう。
 もう一度、貴女にときめこう。

「全く、しょうがないわねえ」
 ピアノに突っ伏して眠る真姫ちゃん、朝陽を浴びた彼女の赤い髪がとても綺麗。
 真姫ちゃんの家に泊まって、一緒に寝る時に見る寝顔と、同じ顔をしている。
 でも、今は合宿中だから、普段みたいなやり取りは我慢我慢。
「ところでにこっち、昨日は真姫ちゃんと仲良く出来たん?」
 真姫ちゃんを遠目に見ながら微笑んでいると、さっきまで絵里と話していた希がそんな風に話しかけてきた。
 全く、相変わらず鋭いというか、解っていて聞いているのかしら。
「べ、別にそんな普通の話しただけよ、そうよ普通よ」
 そう言ってそっぽを向く、もう希の突っつきは、嬉しいけどいちいち恥ずかしいのよ。
「ふーん」
 ニヤニヤしている希、これは既に多少は絵里から聞いて、昨日の事知っているわね。
「真姫ちゃんと、二人で焼き芋食べたの。それだけよ、それだけ」
 希に伝えるのは、これだけで充分。
 これだけでも、希はきっと解るから、これ以上自分から言うのは恥ずかしすぎるのよ。
「そっか、良かったなあ、にこっち」
 そうやって、本気で嬉しそうに私に笑いかけてくれるから、私は希のことも、ずっと大切なのよ。
「うん、ありがとう、希」
 今日は真姫ちゃんが起きるまで、傍にいよう、それで真姫ちゃんが起きたら、一緒に練習を頑張るの。
 二人で一緒に、幸せな時間を過ごすの。

次回


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