2期4話、紅と桜、二人の物語、最終盤の空白二つに、いつの日にか何らかの形で、何らかの描写が追加されます:二人の物語~世界で一番哀しい音楽-そして愛になる~(ラブライブ 二次創作 短編 にこまき)/雨泉洋悠 #ラブライブ #lovelive

   二人の物語~世界で一番哀しい音楽~
              雨泉 洋悠

 それはとても、静かで、優しくて、愛しい音。

 にこちゃんたら、私にも何も言わないで、練習を休むとか言い出して。
 私に何も言ってくれないのは、寂しいけれども、きっと何か理由がある筈だから、珍しく言ってくれるまで待っていようと思ったのに、皆がにこちゃんの後をつけようなんてするから、結局着いて来ちゃった。
 にこちゃんは、ラブライブ予選のあの日から、ちょっと寂しそうで、ちょっと変で、その最たるものが、今日の行動だった。
 だから本当は、探っちゃいけないような、気がしている。
 それでも、皆がにこちゃんの事を知りたいと後をつけるのを止める事も出来無くて、流されるままに着いて行くしか出来なくて、いまにこちゃんのいつもと違う、見た事無い表情を見て、自分の胸の奥がざわざわするのを、押さえつける事が出来ないでいる。
 私は結局、にこちゃんの事を、知りたいと、思ってしまっている。
 にこちゃんたら、私でも見た事無いような、優しい顔で買い物していて、それはつまり、手料理を作ってあげたい相手が、にこちゃんにとってとても大切な人だと言う事を、示しているような気がして、自分の胸に沸き上がってくる、暗い気持ちを、どうしたら良いのか、解らなくて、苦しくて、寂しくて、少しだけ、痛い。
 こんな暗い気持ちを、にこちゃんに対して持っている事、にこちゃんには、本当は知られたくない。
 でも、本当は、ずっと不安で、時々、今日みたいに、にこちゃんが何も言ってくれない時は、にこちゃんに、ここから先は入って来ないで、と言われている様な気がしたりもして、怖くなる。

 私はにこちゃんに、どこまで赦されているの?
 私はにこちゃんの、どこまで踏み込んでも良いの?

 凛の言う通り、にこちゃんだって、私に意地っ張りだなんて言われたく無いかも知れない。
 私の方こそ、にこちゃんに相談したのなんて、あの時のたった一度だけで、こないだの時も、その前の合宿の時も、意地張ってる私に、にこちゃんの方が手を差し伸べてくれただけで、その前からも多分ずっと、にこちゃんは、私の意地っ張りな部分も、優しく包んで、私にそっと手を差し伸べて、大切にして来てくれた。
 だから私は、もっと、私の方からも、にこちゃんの事を、大切にしたい。
 あの日の夜、今居るこの場所で、少しだけ我儘言ってくれた、にこちゃん。
 私は、もっと、にこちゃんの為に、何かをしてあげたい。
 あの日とあの日の夜に、少しだけ見えた、にこちゃんの本当の姿を、私はもっと、ちゃんと知りたい。

 って、思っている傍から、やっぱり、にこちゃんはちゃんと、いつも通りのにこちゃんでもあって、これはもう、徹底的に、問い質すべきなのかも知れない。

 でも、それでもにこちゃんは、私達から目を逸らして、何も言ってくれなくて、私達も結局、それ以上何も言えなくなってしまった。
 にこちゃんはやっぱり、意地っ張りだ。

 また、あの日の夜と同じ場所。
 希が話してくれた、私が知らない、一年生の時のにこちゃん。
 にこちゃんはプライドが高くて、意地っ張りで、自分の妹さんや弟さんにも、ずっとスーパーアイドルだって、言い続けていた。
 そう思っていたけれども、花陽は、私が絶対に自分一人では辿り着けない答えを、静かに教えてくれる。

 にこちゃんはアイドルが大好きで、本当にアイドルで居たかった。

 それは、私達の中で唯一人、唯一、にこちゃんと同じ気持をずっと持っていた、同じ様にずっとアイドルに憧れていた花陽だからこそ、辿り着く事が出来た、にこちゃんの心の真実。
 希に加えて、絵里も話してくれる、一年生の時のにこちゃん。

 一人になっても、頑張り続けた、にこちゃん。
 一人になっても、ずっとあの部室を守り続けてくれていた、にこちゃん。
 何があっても諦めなくて、アイドルで居続けようとした、にこちゃん。
 あの綺麗な紅色の瞳で、強い眼差しでずっと、決して負けずに、その先を見つめ続けていた、にこちゃん。

 やっぱり私はまだ、にこちゃんの心の奥に踏み込む事は、赦されてなくて、私達はにこちゃんの心に、無理矢理に土足で踏み込んでしまったのかも知れない。
 それでも、穂乃果が言ってくれる。
 私達が、にこちゃんの為に、してあげられる事。

 希と絵里が、考えて、ことりと皆で、準備した、にこちゃんの為の、可愛い衣装。
 皆で準備した、にこちゃんの為だけのステージ。
 海未と二人で、海未がにこちゃんの為に、作った歌詞と、私がにこちゃんの為に、作った曲。

 にこちゃんが一人で歌う、最後の曲。
 私が作った、にこちゃんの為の、世界で一番哀しい音楽。
 もう、この曲を、にこちゃんが一人で歌う事は無いの。
 だからもう、これからはこの曲も、世界で一番哀しい音楽では無いの。
 これからはもう、この曲は皆で歌う、にこちゃんが合宿の夜に教えてくれた、にこちゃんの為だけではない、皆の音楽。

 こころとここあと虎太郎が、嬉しそうに笑って、拍手してくれている。
 私が今まで、世界で一番、アイドルとしての私を見せて上げたかった、でもずっと見せて上げる事が出来なかった、大切な子達。
 私が、穂乃果に、ミューズの皆に、何よりも真姫ちゃんに出会えるまでの間、ずっと支え続けて来てくれた。
 結果的に、私の望む形になったのかな。
 まったくね、穂乃果はいつだって、私の大切な場所に土足で、無遠慮に踏み込んでくる。
 それが、私を、どれだけ傷付けて、どれだけ苦しめて、そして、どれだけ救ってくれたか、貴女はきっと、解らないわね。
 貴女には、ずっと、そのままで、私は居て欲しい。
 それと、まったく、何て顔してるのよ。
「真姫」
 そんな寂しそうな、申し訳無さそうな、泣きそうな顔で、私を見て、大丈夫だよ、私は今、凄く嬉しいよ。
 まだ皆も居るから、真姫ちゃんも部活モードで居てよ。
「にこちゃん」
 微かに揺れている、真姫ちゃんの、高貴な瞳。
 まだ泣かないで、真姫ちゃん、今泣かれたら、私が持たないから。
「ありがとう、真姫、みんな」
 そう言って、こころとここあと虎太郎の、三人の方を向く。
 これ以上、真姫ちゃんの瞳を見ていると、多分止められないから。
「真姫ちゃん、今日、家に泊まりに来て」
 背中越しに、真姫ちゃんにだけ、聞こえる声。
「……うん」
 その返事を背中に聞きながら、私は大切なこころとここあと虎太郎の下へ、足を踏み出した。



   二人の物語~そして愛になる~

 その場所に踏み込む者、しかと覚悟せよ。

 こころとここあと虎太郎、そして、真姫ちゃん。
 五人で、家路を急ぐ。
 私の、大切な妹弟と、大切な人。
 三人は、少し前を楽しそうに歩いていて、私は真姫ちゃんと二人で、何も話さないままに、オレンジの光が照らす中を歩いている。
 いつもの様に、オレンジの光りに照らされた真姫ちゃんの赤髪の房は、とても綺麗で、真姫ちゃんの歩調に合わせて、ふわふわ揺れるその姿が、とても愛らしい。
 やっぱりその房は、真姫ちゃんのとても可愛らしい部分の一つで、本当はずっと触っていたいくらいに、愛おしい。
 時折その赤髪の房を弄る、細くて、長い指先、この指先が、今日私が一人で歌う最後の曲を作ってくれた。
 これからは皆で歌う曲、ちゃんと真姫ちゃんは、皆で歌う曲としても、作ってくれた。
 私にとって、真姫ちゃんの手は、奇跡のような、魔法のような、そんな手。
 ことりの手も、海未の手も、大切で、大好きだけど、真姫ちゃんの手は、やっぱり別格で、本当は私は、そんな真姫ちゃんの手にも、ずっと触れていたい。
 そんな目でちらちら見ているのを、真姫ちゃんに気付かれていたみたいで、真姫ちゃんは少し恥ずかしそうにしながらも、意を決したように、私の手に、もう片方の手を重ねてくれた。
 私よりも、体温が高くて、その普段は隠している、情熱的な心の温度すら、伝えてくれる様な、暖かさ。
「あーお姉ちゃん、手繋いでるー」
 ここあが目敏く気付く。
 すかさず、真姫ちゃんがびくっとして、手を離そうとするのを全力で繋ぎ止める。
 離してなるものですか。
「に、にこちゃん」
 真姫ちゃん、いつもの様にびっくりしている。
 うん、こう言う時はいつもの様に畳み掛けるに限るわね。
「そうよ、ここあ。私と真姫ちゃんはミューズの中でも、一番の仲良しだから手を繋ぐのよ」
 真姫ちゃんの体温が、更に上がっていってるのが、繋いだ手から伝わる。
「うええ」
 そんな呟きを残して、赤髪の房を弄りながら、恥ずかしそうに俯いちゃう、真姫ちゃん。
 うん、良かった、私まだまだ、真姫ちゃんに対して、主導権握れるみたい。
「ずるーい、じゃあここあもお姉ちゃんと繋ぐー」
 そう言って、空いている方の腕に自分の腕を絡めてくっついてくる、ここあ。
「じゃあ、私と虎太郎は、真姫さんと繋ぎます」
 そう言って、二人で真姫ちゃんに対して手を伸ばす、こころと虎太郎。
「マッキー」
 虎太郎は、マッキーと呼ぶ事にしたみたい。
 そのうち私も、呼ぶ事もあるのかな。
「うええ、よ、よろしくお願いします」
 真姫ちゃんたら、普段子供の扱いに慣れている風なのに、今日は妙に畏まっちゃって。
 真姫ちゃんが、赤髪の房を弄っていた方の手を、二人の差し出した手に重ねる。
 真姫ちゃん、ちょっと感心したような顔をしている。
「どうしたの?真姫ちゃん」
 こころも虎太郎も、不思議そうな表情を浮かべる。
「どうしたんですか?真姫さん?」
「マッキー?」
 真姫ちゃんは、頬を綻ばせながら答える。
「こころちゃんも、虎太郎くんも、にこちゃんと同じ感触と、体温ね」
 その時の、真姫ちゃんの、オレンジ色に照らされた優しげなほほ笑みと、その言葉を聞いて、少し驚いた表情の後に、ちょっと照れた表情で笑う、こころと虎太郎の嬉しそうな笑顔を、私はきっと、永遠に忘れられない。

「こころ、ここあ、虎太郎、真姫ちゃん。今夜は何食べたい?」
 あの日と同じスーパー、こころちゃん達、三人だけでなく、私の事も一緒に呼んでくれる、にこちゃん。
「今日は真姫さんがお客様だから、真姫さんの好きなものが良いです」
 そんな事を言ってくれる、こころちゃん。
 繋いだままの手、にこちゃんと同じ手。
「さんせーい」
 同意してくれる、ここあちゃん。
「マッキー」
 いつの間にか、今まで聞いた事ない私に対する呼び名が定着していた、虎太郎くん。
 今のは同意の意思表示らしい。
 こころちゃん達、三人の気遣いが、嬉しくて、ちょっとこそばゆい。
 私は少し恥ずかしくて、にこちゃんからちょっと視線を逸らしてから、呟く事にした。
「……トマト」
 視界の端の、にこちゃんの顔が、嬉しそうに微笑む。
「うん、解った。真姫ちゃん、トマト好きだもんね」
 ああそう言えば、にこちゃん私がトマト好きな事、何で知っていたの?
 私、自己紹介文を書く前に、そんな話した事あったかな。

 五人で晩御飯を食べて、一緒にテレビを見て、皆でトランプをしたりして遊んでいると、三人が遊び疲れて寝てしまって、にこちゃんと一緒に三人を寝かしつけていると、何だか自分にも妹弟が出来たみたいで、不思議な感じだった。
「ママにも真姫ちゃんをそのうち会わせたいけれども、ひとまずはこころ、ここあ、虎太郎と仲良くなってくれてよかった」
 そう言って、こころちゃん達、三人を見つめるにこちゃんの横顔が、月明かりに照らされて、その白さがより一層映えていた。
「私も、にこちゃんのママに、会ってみたい。今日は、何だか、にこちゃんが一気に四人に増えたみたいで、嬉しかった」
 そう言って、微笑みかけたら、にこちゃんはいつもの様に、恥ずかしそうに、笑ってくれた。

 私の部屋、私の城、今まで誰も、自分から立ち入らせる事は無かった、私の心。

 真姫ちゃんを、私の部屋に連れ入れる、こないだ一度入ったって言っていたから、もう隠すものも何もない、真っ更な、私。
「にこちゃん、電気、着けないの?」
 入口で、真っ暗なままの部屋に、少し戸惑っている、真姫ちゃんの不安気な声が、背中に聞こえる。
「うん」
 そのまま、私だけ、部屋の奥まで、進み入る。
 真姫ちゃんは、それきり、言葉も無く、私の言葉を待ってくれている。
 ただただ、感じる、怖さ。
 今日どれだけ、嬉しい事があっても、あの日あれだけ、真姫ちゃんが嬉しい事をしてくれていても、どれだけ、嬉しかった日々が降り積もった花びらが、私の深淵を埋め尽くしてくれていても、出来る事なら、永遠に、真姫ちゃんに、知らないままでいて欲しかった、私の中の真実。
 自分の意志とは無関係に、震える身体を無理矢理に押さえつけながら、最後に一呼吸置いて、月の灯すら雲に隠された瞬間に、私は意を決した。

「真姫ちゃん、これが私だよ、これが本当の、矢澤にこ」
 にこちゃんの言葉、微かに震えている。
 その背中は、私がいつも感じているような、部長としての強さとか格好良さとか、優しさとか、解りやすくは感じられなくて。
 一回りも二回りも小さく感じて、同じく私が、いつもにこちゃんに感じている、可愛さとか綺麗さとか、小ささばかりを強く感じさせて、その寂しさが、胸を打った。
「見栄っ張りで、意地っ張りで、妹弟の前で皆の事を、バックダンサー扱いする様な、その癖、学校では偉そうに部長面して、笑っちゃうよね」
 静かに、ゆっくりと。
「格好悪くて、底意地が悪い、酷い奴よね、私」
 彼女が、一人で歩いていた距離を、一気に縮める様に。
「本当に、どうしようもない私で、真姫ちゃんに大切に想って貰う権利なんて、私には無いの」
 月明かりが、再び彼女を照らす様に、静かに、優しく。
「本当に何も無いの、私がずっと貫き通せた私なんて、ただアイドルが好きなだけの私だけ。そんな……」
 ただ、彼女の背中から、月と同じ様に、自らの手で、包み抱いた。
「違うよにこちゃん、もう解っているよ。皆も私も、ちゃんと、解っているよ」
 貫き通す事でしか、自分を、妹弟を、家族を守れなかった、そんな優しすぎる、小さなお姉さん。
 にこちゃんの、私があげた香りと、にこちゃんのいつもの髪の香りに包まれながら、その背中が滴で濡れていくのと同時に、私の彼女に回した手も、静かに濡れていった。

 真姫ちゃんと二人、いつもの場所に座る。
 私があげた、真姫ちゃんの香りも、真姫ちゃんの髪の香りも、今日も同じ。
 暗がりの中でも、真姫ちゃんの顔の綺麗さは、尚引き立っていて、滴に濡れたその瞳と、繋いだ両手の温もりとも合わさって、ああ、やっぱりこの子が、私にとっての、ある意味での、全てなんだ、と思う。
「真姫ちゃん」
 名前を呼ぶと、嬉しそうに微笑んでくれる真姫ちゃん。
 今でないと、きっとまた言えなくなる。
 多分それは、きっと今なんだ。
「真姫ちゃん、私もしかしたらもう二度と言えないかも知れない、もしかしたら間逆かも知れない。それでも、今しか、剥き出しの私を晒している今だからこそ言えるのかも知れない」
 真姫ちゃんは、ちょっと不思議そうな顔。
 ああ、やっぱり真姫ちゃんは、こんなにも綺麗で、美人さんで、普段は格好良い時もあるのに、なのに、どうしたって、どうしようもないぐらいに、可愛いの。
「好きよ、真姫ちゃん。私矢澤にこは、西木野真姫、真姫ちゃんを大好き。あの日からずっと、きっと、これからもずっと」
 そして、戻る月明かりは、彼女の頬を照らす。
 流れ落ちる滴をも、その明かりで照らしながら。
「真姫ちゃん?」
 その滴は、止め処なく溢れ始めて、惚けたままのその美しさのみを湛えた、真姫ちゃんの顔を、絶え間なく流れ落ちていく。
「真姫ちゃん、大丈夫?」
 そんな筈はないと心の底で想っていても、沸き上がってくる微かな不安。
「うっ……ふっ、ひっ」
 声を上げて泣き始める真姫ちゃん、期待通りである筈と望んでいても、堪え切れない焦燥感。
「ごめんね、真姫ちゃん。びっくりさせたかな。あの時だけだもんね、私がこんな事言ったの。でもね、だからこそね、ちゃんと伝えたかったの、たった一度だけになったとしても、ならなかったとしても、伝えたかったの」
 泣きながら、顔を横に振る真姫ちゃん。
「ふっ、ちが、ひっ、違うの、にこちゃん、ふっ、あの日からずっと言ってくれなかったから、私、多分本当はずっと不安で、ひっ、唯の、仲が良いだけの後輩なのかなって、そんな事無いって思っていても、時々、ひっ、凄く、不安だったから、嬉しいの、本当に、嬉しいの」
 ああ、ダメだなあ私、先輩失格。
 こんなにも、真姫ちゃんを、大好きな後輩を、大切な子を、ずっと不安にさせていたんだ。
 私、結局はやっぱり、甘えていたんだ、ずっと、真姫ちゃんに。
「私だって、私は西木野真姫は、矢澤にこが、にこちゃんが好き、大好き。あの日に言った通り、出会った時からずっと、これからもずっとなの」
 少しだけその滴を留めて、高貴な瞳を私に向けて、真姫ちゃんは言ってくれた。
 だから私は、もう、きっと、二度と止まれない、止まれなくなった。
「にこちゃ……ふっ」
 重なり合うお互いの唇が、この部屋に満ちていた筈の、全ての音を、遠くへと消し去った。
 真姫ちゃんの香りと、真姫ちゃんの匂いの中で。

 

 にこちゃんが、その小さな手で、私の片方の手をその胸元に包み込んでくれている。
「真姫ちゃん、私ね、真姫ちゃんのこの綺麗な手が大好き。ずっとねこうやって抱きしめたまま寝たいと思ってたの」
 そこに、自分のもう片方の手を重ねる。
「にこちゃん、私だってね、にこちゃんのこのちっちゃな手が大好き。いつも私が食べたいものを作ってくれるこの手が大好き」
 そう言って、にこちゃんの胸元に顔を寄せる。
 香りだけでなく、感じ取れる、にこちゃんの匂い。
 あの日から、一緒に寝る時にはずっとさせて貰っている事だけど、今日はちょっとだけ違う。
 そのまま、にこちゃんの小さな手に唇を寄せた。

 

 そして、加速度を増すほどに、その密度を増していく。

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